モジュールU 紛争後社会における教育

1.ねらい

 モジュールIIでは、平和構築という大きなテーマから見たときの教育が発揮すべき機能について理解することを目指す。教育が、紛争の発生や社会的緊張の高まりに及ぼす影響ならびに、紛争後の平和の確立・定着に果たす役割を認識した上で、平和構築に役立つ教育のあり方について考えていく。教育は平和構築において不可欠な一支柱である。しかし同時に、教育は平和構築のためだけに機能するものではない。したがって通常の教育活動の水準を高めながら、平和構築のニーズを導入していかなければならない。

2.到達目標

  • 平和構築における教育の役割を理解する。
  • 平和構築としての教育の方法論を理解する。
  • 平和構築の観点からみたときに望まれる教育を実践する技能を習得する。

3.構成と各ユニットの概要

  • ユニット1:平和構築における教育の役割
  • ユニット2:平和構築における教育の方法論
  • ユニット3:平和構築の実践的手法

(1)ユニット1
 ユニット1では、ここでは平和構築活動としての教育の役割を理解することを目指す。まず平和構築の観点から、教育がどのように位置づけられるのかを確認する。次に、紛争後社会における教育に焦点をあてて、何が課題となるのかを概観する。国際社会の教育支援体制について説明した後、日本及び広島の教育の復興の事例をとりあげて、紛争後社会の教育問題について具体的に考えるための題材とする。

<構成>
1-1 平和構築と教育
1-2 紛争後社会の教育
1-3 国際的な教育支援体制
1-4 日本と広島の教育の戦後復興

<目標>
・平和構築としての教育のあり方を理解する。
・国際的な教育支援体制を理解する。
・日本と広島の事例を活かして教育の復興を考える。

(2)ユニット2
 ここでは平和構築活動としての教育の方法論を理解することを目指す。まず方法論的な視座を確かめるために、現在の国際的な教育支援において権威的な地位を得ている「万人のための教育」について参照し、そこから二つの平和教育の方向性を導き出す。「平和教育の価値判断的アピローチ」について説明し、「平和教育の技術論的アプローチ」との対比を示した後、価値判断的な流れを補強するものとしての人権教育という方法論的視座を扱う。そして技術論的な視座の理論的な支柱ともいえる紛争解決論の骨格を、確認する作業を行う。

<構成>
2-1 平和構築のための教育の枠組み
2-2 平和教育
2-3 人権教育
2-4 紛争解決教育

<目標>
・平和構築としての平和教育の方法論を理解する。
・平和構築としての人権教育の方法論を理解する。
・平和構築としての紛争解決教育の方法論を理解する。

(3)ユニット3
 広い意味での平和のための教育を様々な形で実践する参加者を想定して、ワークショップを通じて、様々な角度から平和のための教育を実践する技能を高めていくことを目指す。参加者の身の回りの事例を討議したり、紛争後社会を想定して教育制度再建案を出し合ったり、平和教育プログラムの評価をしたり、紛争解決教育のロールプレーをしたり、広島の事例を題材にとりあげたりするやり方を、選択的に用いながら、平和のための教育をどのように実践していくべきかについて、参加者同士で話し合う機会も設ける。

<目標>
 ユニット1・2に関係する紛争後社会の平和のための教育活動の立案・分析・評価などの手法を実践的に会得する。