日本および広島の戦後復興を、平和構築の事例として位置付けた上で、両者の歴史から得ることができる教訓を示していく。本モジュールは、日本や広島を題材とするが、歴史的知識を深めること自体を目的とするわけではない。あえて現代世界の紛争地域ではない場所に戦後復興の事例研究の題材を求めることによって、表層的な類似性にとらわれず、平和構築の実施方法について考える機会を提供することを目的とする。
日本や広島の歴史が、現代世界における紛争後社会のいずれの歴史とも異なっていることは、言うまでもない。しかしそもそも他の地域と全く同じように実施される平和構築などは存在しない。平和構築は、常に独自の事情を持った個別的なものとして実施されるからである。それにもかかわらず過去の平和構築の事例を見ていくのは、それら実勢の事例から教訓を学ぶことにより、平和構築を行っていく上で現実に起こりうる具体的問題に対応する能力の向上を図るためである。
日本や広島の歴史は、決してモデルとされるべき最高かつ最善の平和構築の実例ではない。しかしそれでも両者の事例には、平和構築全般に関わる教訓が含まれている。60年後の姿を年間の戦後史の推移をふまえて確認できる事例であるという点で、日本や広島の歴史の活用が持つメリットもある。 |
- 日本の歴史を平和構築の観点から理解する。
- 広島の歴史を平和構築の観点から理解する。
- 日本と広島の事例から得られる教訓を、他の平和構築の事例について考える際に活用する技能を習得する。
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- ユニット1:日本の近代化と戦後復興
- ユニット2:広島の近代化と戦後復興
- ユニット3:紛争後社会における日本および広島の復興経験の活用方法
付録教材:映像「Postwar Reconstruction and Peacebuilders in Hiroshima」
<モジュール全体の目的>
・日本の歴史を平和構築の観点から理解する。
・広島の歴史を平和構築の観点から理解する。
・日本と広島の事例から得られる教訓を、他の平和構築の事例について考える際に活用する技能を習得する。 |
日本の歴史の概観することによって、平和構築の生きた教訓を得ていくことを目的とする。まず近代化の端緒となった明治期の日本を、「内戦構造克服の過程」にあったものとして位置づける。その文脈において、第二次世界大戦にまでいたる日本の「超国家主義」の時代を理解する。そして無条件降伏によって開始された占領体制下の日本が、「平和国家化」という大きな目標にしたがって体系づけられたものであったことを理解する。 |
<構成>
1-1 近代国家の樹立
1-2 全体主義と軍国主義
1-3 軍事占領体制と改革
1-4 平和国家像の定着
<目標>
- 平和構築の観点から日本の近代化の歴史を理解する。
- 平和構築の観点から日本の超国家主義体制を理解する。
- 平和構築の観点から日本の平和国家化を理解する。
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ユニット2では、広島の歴史を概観することによって、平和構築の生きた教訓を得ていくことを目的とする。まず日本の明治期に特有の問題を抱えていた広島が、なぜ軍都としてのアイデンティティを造り上げていったのかを明らかにする。その上で、戦後の平和記念都市建設法を契機とする広島のアイデンティティ再構築のプロセスを、地方都市の平和構築政策の一例として、体系的な見取り図の中で理解することを目指す。
平和構築は通常、国家的な枠組みで行われるが、地方の復興が平和構築にとって大きな課題であることも間違いない。広島の事例は、完全な荒廃から立ち上がった、ある地方都市の興味深い復興の歴史を示してくれるものとなる。それは極めて独特な歴史的背景を持ってはいるが、地方レベルでの戦後復興を考える際に有益な示唆を与えてくれる実例であると言えるだろう。広島が復興の普遍的なモデルとなると考えるのは正しくないが、多くの教訓を引き出すことができる地方都市の復興事例として、広島の歴史を見ることは有益なことであろう。 |
<構成>
2-1 軍都広島の発展
2-2 原爆被害そして復興への意思
2-3 アイデンティティ主導の平和構築
2-4 復興過程の諸問題
<目標>
- 平和構築の観点から軍都・広島の歴史を理解する。
- 平和構築の観点から広島の戦後復興の実情を理解する。
- 広島型の平和構築の特徴を理解する。
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ここでは平和構築を様々な形で実践する参加者を想定しつつ、復興の一事例としての日本と広島の経験から得られる教訓を整理し、自国の平和構築という問題意識に引き寄せて発展的に活用させていくための技能を、ワークショップで実践的に習得することを目指す。日本・広島の歴史の中に現代平和構築活動の要素を見出す作業、和平合意調停のシミュレーション、模擬広島市長選挙、戦後復興政策をテーマにしたディベート大会、広島の復興をテーマにしたビデオ視聴後のディスカッションなどを、選択的に行っていくことを想定している。 |
<目標>
ユニット1・2でふれた日本と広島の事例を用いながら、平和構築の立案・分析・評価などの手法を実践的に会得していく。 |
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